この作品は三部で構成されており、一部では帰国子女の高校生活によるほろ苦さが、二部では男性二人が登場するけどどのような展開になるかよくわからず、第三部では大学生となった帰国子女の心の動きから第二部の謎が解けていくという展開です。帰国子女の知った真実は切なく悲しいのだけれども、全体としては温かな気持ちが引き継がれ、帰国子女が大人になっていくという、哀しみを背負いつつも明日以降に希望を抱くエンディングとなっています。作者はハードな内容のミステリーが評判となっていますが、この一冊は叙述トリックではあるものの、バイオレンス場面やサイコキラーの登場といった残虐な場面はなく、多くの方が経験した青春時代の行動とともに、10代のころに抱いた気持ちや葛藤を中心に描かれています。バトンを渡されたの帰国子女ではなく、読者である私たちなのだと思わされるものでした。また、タイトルはそんな意味だったのかと思わされ、切ない感じを抱きつつも爽やかな読了感を持ちました。大人になったことで見えなくなったものはありますが、
明日はきっと晴れると信じ、誰かの為に何かをしようと思えるようになるだけに、中学生や高校生にはぜひおすすめしたい一冊です。
40代主婦 プログラミング